大切な命と防災について考える
東日本大震災から11年を迎えます。お亡くなりになった尊い命に深く哀悼の意を表するとともに、防災教育と災害伝承の重要性を改めて考えさせられます。今年度の愛南町防災教育研究指定校の取組として、昨年の11月に「全国防災小説交流会」をオンラインで開催しました。防災小説をとおして、自他の防災意識を高め、広く発信し、交流することで、他地域の特色を知り、更なる防災意識を高めること、自分たちの地域や郷土を愛する気持ちを育てることを目的としたものでした。今後も大切な命と防災について考える教育の実践を継続していきます。
防災小説交流会における愛南町の代表生徒の作品を紹介します。
これからも明るい未来を描き、防災意識の向上を図って参ります。
<防災小説 愛南町の代表生徒の作品>
十月二十四日(日)午前十時三十分 雨
二十℃(夜間九℃) 文化祭当日 御荘中学校体育館
活気を取り戻した光景に「ただいま」と呟くと「おかえり」と風が吹いた。
中学校生活最後の文化祭。学級合唱、ブロック合唱も成功し、いよいよみんなが楽しみにしていた有志発表が始まった。そのときだった。「緊急地震速報、大地震です。身を守る行動をとってください」突然鳴り響く速報とともに地響きが鳴る。体育館が激しく揺れる。とっさに身を守る人、わけがわからずグランドに走り出る人。いろんな人がいた。とにかく避難しなければ。避難訓練を思い出しながら、大声で高台への避難を呼び掛けた。途中、力を合わせて車椅子のおばあちゃんをみんなで救助した。とにかく必死だった。避難場所は人で溢れかえっていた。人混みをかき分けると、そこには荒れ果てた愛南町が広がっていた。絶望と悲しみで私は涙が止まらなかった。時刻はもう十八時になっていた。
私は以前、クラスで防災について話し合ったとき、御荘中生みんなで励まし合おう、いつも私たちを支えてくれている地域の人たちを安心させる存在になろう、という意見が出たことを思い出した。周りを見ると、この不安な状況を乗り越えるために、みんなが自分にできることを探していた。これでこそ私たちの防災だ、と強く感じた。私も声をかけ合いながら避難所へ向かった。そこでは、防災学習で学んだことを生かしながら、炊き出しの手伝いや小さい子のお世話など、中学生だからこそできる仕事に積極的に取り組んだ。そのとき多くの方に「ありがとう」と言ってもらった。この五文字がどれほど心の支えになるのかを改めて感じた。みんな被災者でみんなつらい思いをしている。そんな中、中学生の私が何もしないなんてありえない。これからの未来を担う私たちにとって、この経験は忘れられないものとなった。
あれから十年。失いかけた私の大好きな愛南町。残された大切なものを胸に歩み続ける。